未来研通信

第47回

2022.11.30

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MUNEKATA

まるでビデオゲームのような

むねかたです。

ちょっと前の話になるんですが(あ、前回もこの書き出しだな)、自動車レースで最終コーナーの大外を壁に沿わせて走ってごぼう抜きする、といった話が話題になりました(画像の直接リンクは貼らないので「自動車レース 壁走り」で検索してね)。

取り上げているニュースサイトではどこでも「まるでTVゲームのような」みたいな感じで紹介されており、何なら走った本人も「昔遊んだゲームでやっていたことを試してみた」って言ってます。はてさて、そんな都合のいいことがこの先ホイホイとできるものなのでしょうか。

そもそも、車がカーブを曲がるときには何が起こっているのでしょうか。重量mの車が半径rのコーナーを速度vで回る時を考えてみましょう。

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相当簡略化したモデルを示します。車にはコーナーの中心に向かって向心力Fがかかります。通常では、この向心力を与えているものはタイヤの摩擦力です。vを上げればFも増えますが、その最大値はタイヤの最大静止摩擦力までとなります。それ以上速度を上げると外に膨らんでコースアウト、となるわけです。また、rが小さくてもFは増えます。ということは、きついコーナーはゆっくり走らないとコースアウト、という、当たり前な事象が数式からも明らかになるわけですね。

ところが今回のように壁に沿わせて走らせる場合、向心力は摩擦力以外に、壁からの抗力が加わります。さらに車には壁との摩擦力が加わります。

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このままですと、壁との摩擦力によって速度vは減速するのですが、アクセルを踏んで車をより加速させれば相殺できます。これにより、普通に走るよりも圧倒的に速い速度でコーナーを駆け抜けることができたわけです。

なーんだじゃぁこういった壁のあるコースならいちいちまじめに曲がらず壁に押し当てちゃえばいいじゃん、となりがちですが、そうとも言い切れません。壁面が一定ではないので摩擦力も安定しません。それに、摩擦力が働く位置は車の側面なので、車を回転させようとする力が生じます。こうなると車の先頭は壁に向いてしまい、その場にとどまってしまうことになるのです。

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コーナーの大外を通るので距離も長くなりますし、そもそも車を傷めます。ですので、今回のは本当に一か八かのギャンブルがたまたま当たったんでしょうね。

で、じゃぁゲームだとどうなのよ、って話ですが、一般的には壁に当たったら減速させるプログラムになっているはずなので、早々都合よくは行きません。まぁひょっとしたら「ここならいける!」ポイントがあるかもしれないので、地道に探ってみるのもいいんじゃないでしょうか。

ちなみに、壁に当たると壁側に向いてしまう現象は超初心者にも容赦なく襲ってくるので、まっすぐ走れずすぐ壁に当たってしまう人はますます走れなくなっていくという負の連鎖となってしまいます。プレーヤーのすそ野を広げるためにはこの辺りをどうするかが永遠の課題ですね。

それではまた次回お会いしましょう。ではー。